2018 BEST MUSIC 20-11

20. Nathaniel Rateliff & The Night Sweats / Tearing at the Seams


ミズーリのフォークシンガーによるプロジェクトの2枚目。ソウルの香り。
 
 

19. U.S. Girls / In a Poem Unlimited


当事者による批評にはユーモアがなくっては!と思わせる、いかがわしいポップソング集。
 
 

18. Rolling Blackouts Coastal Fever / Hope Downs


メルボルン出身の4人組によるインディーギターロック。sub popからリリースも納得の1作。
 
 

17. Kacey Musgraves / Golden Hour


出自であるカントリーミュージックの枠に収まらない、普遍的な愛の調べ。グラミーも受賞。
 
 

16. 吉澤嘉代子 / 女優姉妹


女優という表題のもと、少女と女性の間を揺れ動く、あるいは自由に往来する10曲。これはコンセプトの勝利でもあるのだが、それを可能にしたのは他でもない彼女の表現力である。戯画的な振る舞いは、私的なことを描く存在としてのシンガーソングライター像から意識的に距離を置こうとするものだ。だがその擬態のあり方は、縦横無尽な振る舞いですべてを飲み込み、逆説的に吉澤その人の核を浮かび上がらせる。それはとても素晴らしいことのように思う。アルバムの最後で舞台装置ごとひっくり返してしまうような展開はいささか説明しすぎかなと思うときもあれば、その完璧な振る舞いに圧倒されるときもある。ああ、僕は音盤だけでこんなにも翻弄されてしまう。表現、かくあるべし。自身の核を失うまいと固執し、沈殿していった時代へサヨナラ。あれもこれも、僕であり、ぼくではないはずなのだ。
 
 

15. GONNO × MASUMURA / In Circles


事前情報無しに冒頭「Circuit」を聞いたとき、森は生きているはこういう進み方もあったよなと思ったら、岡田拓郎氏が参加していて膝を打った。そしてそもそも、このユニットのmasumuraとはまさにex-森は生きているの増村氏その人であった。テクノシーンにおいて世界規模で活躍するgonnoとロックバンドのドラマー、そのコラボであるから、電子と生音そういうものをイメージするし、実際そのとおりなのだけれども、ともすれば相反する要素かもしれない「ストイックな揺らぎ」がそこに彩りを添える。
世の中には情報ではなく情動が多すぎるのだ。ミニマルな構築美を聞きながらそんなことを思う。ここにはしっかりと人のぬくもりがあって、それがメロディだけでなく先の揺らぎから放たれるものであるからして、適切な情動の配置を入口に深遠なる奥行きが表現されている。『In circles』はリスナーを飲み込む渦であり、精神的に開放する宇宙でもある。ここで鳴っているのは、そういう音楽だ。
 
 

14. Low / Double Negative


今作もまたBon Iverの作品にも参加したBJ Burtonによるプロデュース。スロウコア・サッドコアの始祖によるモダンサウンド。ノイズに乗るオートチューンからは轟音からこぼれ落ちる美しさ、あるいはそこで鳴っている轟音こそが、美しさそのもののであったことに気付かされる。
 
 

13. サニーデイ・サービス / the CITY


まどろみのようなサウンドの中で冒頭で歌われるファックユーはアイラヴユーの変奏で、それはのちに「音頭」となったその瞬間に、文字通りの意味を文字以上の熱量で持つことになる。なんてことはその後に起こったことたちであって、ここで鳴っている都市の温度を僕はまだ掴みあぐねている。『DANCE TO YOU』よりも死臭が濃いのは確かなのだが。
 
 

12. BROCKHAMPTON / Iridescence


15名からなるヒップホップクルーによるメジャーデビュー作。アート集団による音楽作品。ヴォーカルものもあって、懐が深い。何より、楽しい。
 
 

11. Okzharp & Manthe Ribane / CLOSER APART


南アフリカ出身、ロンドン在住のokzharpとモデルやアーティストとして活動中のManthe Ribaneのコラボ作。音数の少ないクールなダンスミュージック。